大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和24年(控)847号 判決 1949年11月09日

被告人

河内典彦

主文

本件控訴を棄却する

理由

弁護人浅井亨の控訴趣意は原審は被告人に対し公訴事実を認定したがこれは事実誤認である。原審は原審証人小島春夫同岩村正二の証言を排斥し同証人等の檢察官に対する供述調書の記載を採用して公訴事実を認定した。然し原審証人二名共被告人が逮捕せられたより前に多治見市警察署に逮捕せられてそれから両人共自宅に帰つたことなく從つて右両人の原審に於ける証言は何人の影響も受けて居らず全く眞実を述べて居るのであり却つて檢察官に対する供述は檢事に迎合した点がある然るに原審は之を逆に採用して事実誤認に陷つた。

原審公判(第二回)調書の記載によつて右小島、岩村の各証人として供述したところを見ると両名共その檢察官に対する各供述調書における供述と相反し実質的に異なつた供述をしておることを看取するに足り、而して右公判における供述は両名共瞹昧で殊に本件の写眞機を被告人に渡した根拠が薄弱であるのに比しその檢察官に対する各供述調書における供述内容は両者共よく筋道が立つていて首肯すべきものがありこれを被告人の司法警察員に対する供述調書の記載内容に照合するもその眞実性が十分認められ且つ記録上その任意性を疑うべき点は毫も存しないのである。從つて右檢察官に対する各供述についてはいずれも刑事訴訟法第三百二十一條第一項第二号後段の要件を具備するものと言い得るので、原審が前者証言を斥けて右後者供述を採つて前示認定の資料に供したのは正当であるといわばならぬ。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例